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地下へと滑り込む車。
ゆっくりと緩く下る地下を進むと
ガランとした駐車場が広がり
ジムへと繋がってる出入口の近くへと車を停めた彼。
「じゃ、行こっか」
軽い言葉だけで
すぐに車から降りて行くから
そんな態度に急かされるように私も車を降りた。
ドアの前で立ち止まり
彼はポケットからカードを取り出すと
それをスキャンさせる。
無反応だったドアが開き
その先へと向かう背中について行く。
人気の無い薄暗い廊下を進むと、更衣室が見えた。
「オレ着替えて来るけど、一緒に泳ぐ?
泳ぐなら……」
「私は大丈夫です」
言葉を遮るように、ちょっと強く言ったら
意味ありげに含み笑い。
──本当、イヤな男。
「もしかして泳げない? 」
バカにしたように言うその感じ
本当に本当にイヤな男。
でも泳げない事は図星だったから
わざとちょっとため息なんてついてみせて
「泳げなくたって何も問題無いですから」
深い水の中へと落とされない限り、泳げなくても生きて行ける。
ずっと今までそう言い聞かせて来た。
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