470人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな私の反応は
彼には幼稚に映ったかも知れない
クスクス笑う様子を見てそう思った。
「オレがコーチしてやろうか? 」
ニヤリと笑う。
私が本当に泳げないのを見て
可笑しそうに笑う顔が容易に想像出来る。
「……結構です」
ちょっと睨んだって
全く気にしてない様子。
それどころか、何か企んでるような感じさえする。
「まぁ、いいや。すぐ来るから待ってて」
更衣室へと彼が消えて
ポツンと薄暗い廊下にひとり。
非常口の緑色の明かりがやけに目立つ。
更衣室の中からロッカーを開ける音なんかが聞こえるだけで、他にはなんの音もしない。
……本当に誰もいないのかな。
こういう時、昔から何故か
あそこから誰か覗いてたら、とか
誰もいないはずの女子更衣室のドアが勝手に開くんじゃないか、とか
余計な怖さを自分で作り出すクセがある。
奥の廊下の曲がり角、白い天井
挙句は飾られてる高価そうな額に入った絵画にまで、キョロキョロと視線を送る。
そんな中
急に更衣室のドアが勢い良く開いて
思い切り驚いて顔が引きつった。
着替えを終えた彼は、そんな私を見て
……ほら
「お化け屋敷とかもダメな感じか」
また得意のバカにした顔で言うと歩き出す。
Tシャツにフィットネス用の膝上までの水着。
肩に大きなタオルをかけて先を行く後ろ姿を見ながら歩く。
ダメな所ばっかり知られて
思わずため息が漏れた。
最初のコメントを投稿しよう!