悪い女の顔

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悪い女の顔

ヨウさんが黒服として培った人脈のおかげもあって 芸能人、政治家、企業のお偉方など 私の固定客は増えて行った。 入店して1年が過ぎた時 週に一度は必ず店に来る大手企業の社長が連れて来た人物が 私の生活を、人生を一変させた。 その人は 高級外国車の輸入販売会社のトップで 経済雑誌にも特集を組まれるような人だった。 歳は50歳代半ば 見た目はもっと若く見えて 着てる服も、身につけてる物も高価なハイブランドばかり。 初めて顔を合わせた日に 「初めまして、藤井です」 そう言って名刺を渡されたのが始まり。 “この人は逃しちゃいけない” 私の中にある、悪い女の顔がそう囁いて 今まで、店の外で会う事はどの人にも断り続けて来たけれど、藤井さんの要望には何にでも応えた。 ただ一つ 自分の親が揉めていたのを嫌という程見て来たから、不倫というものだけはしたくないと伝えたら 子供はいるけど、奥さんとは3年前に別れたと話してくれた。 「子供って言っても、もういい大人だけどね。 最近じゃいつ話したっけ、位な関係だよ」 藤井さんは笑って言ってたけれど どことなく 寂しそうに感じたのを今でも覚えてる。
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