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「あ」
時間が止まる。
上半身をむき出しにしたくるみと、真正面から見下ろす猛の視線。
思考までも止まってしまう。
「わ、悪い!」
先に動いたのは猛のほうだった。
大きな音を立てて勢いよく、ドアが閉まった。
「すまん! 服を持ってくる前に脱いでるとは……いや、なんでもない。あーっと、タオルと着替えここに置いておくから。俺は飲み物持ってくる。なんでもいいよな」
「は、はい……」
何か起きたのか、理解しているけれどうまく思考が働かない。とりあえずぼーっとしながら、渡された大きめのタオルで身体を拭い、猛が用意してくれた服に着替えることにした。
しばらくしてノックの音が聞こえた。
「も、もう着替えたか?」
「はい大丈夫です」
返事を待ってから、そっとドアが開かれる。
くるみの着替えた姿を見て猛はほっと息をついた。
「……本当に悪かった」
「い、いえ。忘れてください」
お願いだから忘れてほしい。
上半身だけとはいえ、裸を見られてしまったんだ。こんなに恥ずかしいことはない。さっきは驚きすぎてどうしたらいいかわからなかったけれど、じわじわと羞恥が広がってくる。どうして脱いじゃったんだろう。
「……やっぱり服でかかったな」
「はい、これ一枚で着れちゃいました」
「っ」
猛のトレーナーを借りたが、膝上にまで長さがあったのでワンピースの代わりになるだろうと、一枚しか着なかった。
「……お前、わざと、じゃないよな」
「え?」
「なんつーか、えろい、んだが」
「……へ?」
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