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「あっもしかして!」
調理部で今日もお菓子を作りながら、大きな独り言を発する。
「くるみちゃんどうしたの?」
「あっ、な、なんでもないよ」
さすがに周りに聞こえていたようだけれど、なんとか誤魔化した。
もしかして、とくるみの頭の中に浮かんだ答えがひとつ。
もしかして猛は、「遊び人」なのではないか。
今までは怖い印象ばかり際立って、みんなから怖がられていると思い込んでいた。
でも、違ったんだ。
かっこいいし女の子を守ってくれそうだ。しかもやさしいところもあるから女の子にモテるのは当たり前だろう。だからきっと遊んでいるんだ。くるみは男性経験もなく、猛からしたらきっと単純で、簡単に引っかかってしまった。
疑いたくはないけれど可能性がないとはいえない。このまま遊ばれるような関係にはなりたくないし、憧れのあの人をそういう人だと思いたくもない。
猛はあの日からでも部活のある日はほぼ毎日調理部に顔を出すようになっていた。あの日何度も謝られたけれどそんなに申し訳なく思っているなら顔を見せることなんかできないだろう。きっと演技だったんだ。
一度気になってしまったらもう悪いことしか考えられなくなる。
くるみは、こっそりと様子を伺うことにした。
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