06.遊び人

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 その次の日も、そのまた次の日も、探偵ごっこは続いた。  毎日尾行しているとくるみの探偵っぷりもサマになってきたような気がする。毎日通る道だから余計に。  こうやって毎日猛のあとをつけていても、同じコースばかりだ。たまにゲームセンターに寄ったりもするが、それだけ。特に女の子の肩を組んで歩いているわけでもないし、ナンパをしたりするわけでもない。いったいいつになったら本性が見えてくるんだろう。  くるみは今日も結局猛の家まで来て収穫もなく引き返すことになる。 「おい」 「っ!」  背後から、声をかけられた。  この低くて太い声は、紛れもなく猛のものだ。 「百瀬。こんなとこで何やってんだ」 「……」  猛が家に入るのを見届けたはずだったのに。  くるみの全身は熱くなり、いやな汗をかき始める。怖くて後ろを振り向くことができない。 「最近会えないと思ったら……なんで俺のあとをつけてるんだ?」  聞こえてくる声からは怒りが滲んでいる。  逃げ出したい。  尾行していたなんて知られたらきっと嫌われてしまう。でももう名前を呼ばれてバレてしまった。引き返せない。 「ご、ごめんなさ」  恐る恐る振り返り、頭を下げた。怒鴫られるのを覚悟していた。 「やっぱり、怒ってるよな」  けれど頭上に落ちてきたのは、弱い声だった。 「え?」  そっと顔を上げる。 「この前のこと、本当に悪かったと思ってる。どうかしてた」 「……」 「腹いせに、俺の弱み探ろうとしてたのか?」 「そ、そういうんじゃないです」  ただ、猛の本当の姿が知りたくて。 「じゃあなんだよ。ここ数日、こっそり見つからないように追いかけただろ?」 「……」  ばれていないと思ったのに。  どうやらくるみには探偵の素質はないようだ。  もうこの際はっきりと伝えてしまったほうが、すっきりする。きっぱりと遊んでいた、と言われれば憧れは砕け、ただの日常に戻るだけだ。  くるみは覚悟を決めて、小さなこぶしをにぎった。
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