06.遊び人

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「せ、先輩って、遊び人なんですか!」 「……は?」  勢い余ってぎゅっと目をつむっていた。  これじゃあ猛の表情を確認することができないのに。  くるみは怖かったのだ。  遊びだと、言われることが。 「……なんで、そう思った?」  先ほどまでの弱い声などどこかに消えて、重く低い声が響いた。 「……だ、だって、先輩私にあんなことを……」 「ああ……あれが遊びだってことか」  こくりとうなずく。  まだ、顔を見る勇気が出ない。 「そうじゃなくちゃ、おかしい、です」  猛くらいかっこいい人が、くるみにあんなことをする理由なんてひとつしかない。バカそうで、男を知らないから、簡単に偏されると思ったのだ。  くるみの中で答えは決まっていたが、猛には否定をしてほしいと願う。  そうじゃない、と言ってほしい。  そうすればまた一緒にシュークリームを作って食べて、動物園に遊びに行きたい。あの時が一番たのしかったのに。  なんで、騙されてしまったんだろう。 「……そうだよ」 「え?」  思わず顔を上げた。  鋭い瞳と視線がぶっかる。怒りの滲んだ表情だった。 「ばれちまったか。そうだよ、遊び人って言われたらうなずくしかない」 「や、やっぱり……」  くるみの想像通りだった。わかっていたのに、悲しみがせり上がってくる。  憧れていた人の新たな一面。  見たくなかった一面だ。 「お前、遊び相手になってくれんだろ?」 「っ」  手首を掴まれた。  鋭い眼光が、くるみを突き刺す。 「……こっち、来い」 「ひゃっ」  腕を引っ張られる。ぎりぎりと手首をにぎられて、痛みで眉根を寄せた。
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