死が二人を分かつまで

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「だからね、今度は私が迎えに行くって決めてたの。君を守れるように強くなったんだよ」 そう微笑む彼の唇に僕は自分の唇を重ねていた。 「どうしてだかわからない」 「うん。君の心が追い付くまでゆっくり待つよ」 彼は僕の背中に腕を回してぎゅっと抱きしめた後、おでこや顔に沢山キスの雨を降らせた。その度に多幸感で満たされる不思議な感覚。それと同時に僕はこの人を“愛している”そう漠然と感じた。まだ、この言葉を口にする事は出来ない。この想いに実感を感じないからだ。それでも、目の前の彼に酷く惹かれる。きっと、性別や種別すら関係無く、何度生まれ変わっても何に生まれ変わってもこの気持ちだけは揺るがない。そう確信するのに、言葉にする事は恐ろしかった。 死が二人を分かつまで。 夢で見たものはひたすらそれを僕に考えさせたかったんじゃないのか。 だから、考えた。今ある自分の中にある不安を。今、伝えられる言葉を。 「あなたを失う日が怖い」 僕の口から出た精一杯の今の気持ちだった。その言葉に彼は少し寂し気な表情を見せた。 「……私の命が尽きるその日まで、君を愛しぬくよ」 とても優しくて、とても恐ろしい言葉だと感じた。僕は踵を返して彼の元から走り去った。彼は追って来なかった。 「待ってる。君の心が追い付くまで」 男はそう言って、いつの間にか側に来ていた黒塗りの高級車に乗って夜の闇に消えて行った。
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