死が二人を分かつまで

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「私はね、前世の記憶を持っているんだ」 「え」 唐突にそう言われて僕は驚いた。それ以外の言葉が出ない程に。 「私達は前世で恋人同士だった。だけど、私の家は裕福な家庭で嘗ての君を恋人として認めて貰う事は出来なかった。無理矢理結婚しようとした。君も私を忘れる為に理解ある人と結婚しようとした。だけど、君は私を選んでくれて、一緒に死んだんだ。来世で一緒になろうって約束して。それなのに、また同性同士で、私の家はヤクザな稼業と来たもんだ。運命ってのは残酷だよね」 つらつらと零れだす綺麗な音楽みたいな彼の言葉を聞いて、僕は知らず知らずの内に涙を流していた。哀しいとか嬉しいとか何か心が動いた感じはしなかったけれど、その涙を拭われて、初めて“幸福”を感じた。温かな体温を感じる。声が聴ける。その全てが幸福だった。心よりも先に体が反応する様に、僕は彼に抱き着いていた。
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