死が二人を分かつまで

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ここで、彼女とは独立した僕の意思が「そうか、この二人は互いを好きなんだ。それなのにその思いに蓋をして、別の人と結婚しようとしたのか」と理解した。見ているのは彼女の視点だけれど、何処か他人の様子を傍観している様な不思議な感覚。二人は手を繋いだまま、リビングに向かった。そこの救急箱から白い錠剤が沢山入っている瓶を手に取りそのまま浴室へと向かって行った。 「ごめんね。こんな形でしか、愛してあげられなくて」 僕の視点側である女が言った。最も、僕にはそれを言った感覚は無かったがハッキリとそう聞こえた。相手は(かぶり)を振って、微笑みを浮かべた。 その瓶の中にある錠剤を相手が飲んで、二人は暫く見つめ合って何事かを話していた。次第に、相手側の目がとろんとして来て酷く眠そうな顔になった。 「おやすみ。またね」 僕の視点側の女が言った。最も、僕にそれを言った感覚は無かったが(以下略)。女は眠るその人の手首をI字型カミソリで切った。傷口から赤い血が滴り出す。その腕を水を張った浴槽に浸けた。傷口から漏れだす血が浴槽を赤く染めて行く。女は瓶に入った残りの錠剤を全て飲んだ後、同じように手首を切って浴槽に沈めた。薄れていく意識の中で、隣で眠りながら息絶えて行くその人の手を握りながら、自分も深い深い深海の様な静かな眠りに落ちて行った。
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