死が二人を分かつまで

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「お待たせ致しました。ご注文をお伺い……」 半個室のお客様はどう見ても堅気のお客様には見えませんでした。十人程が座れる座敷に座っていたのは、黒いスーツに身を包んだいかにもな人達。一瞬、青ざめたが、おやっさんのご贔屓さんの中には偶にこういう人達が秘密裏にやってくる。開店直後に入店して、殆どのお客が帰った後に帰って行く超ロングステイのお客様だ。ワンドリンクで何時間も粘る様な迷惑な客では無く、常に注文が入る太客である。料理を運ぶ僕達バイトからしたら「失敗が絶対に許されない」とっても怖いお客様です。 「ご注文をお伺いします」 座敷には上がらずに一番、側に居た金髪のお兄さんに声を掛けるが、僕を呼んだのは一番奥に座る人だった。仕方なく、座敷に上がり注文を取りに行く。ハンディ端末を開いて、言われたメニューを登録しながら注文する男性の横顔を見た。すっきりとした面立ちは横から見てもイケメンである事が分かる。 注文を言い終えたので、僕が登録したメニューを確認しようと顔を上げた時、その人の真正面の顔を見てドキリとした。―――似ている。夢のあの人に。
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