死が二人を分かつまで

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僕がバイトを終えて帰宅しようと店を出ると表にはあの男の人が一人で立っていた。どう見ても自分を待って居たとしか思えない。正直、夢に出て来るあの人にそっくりだし、さっき「やっと会えた」と言っていた事が気になるが、関わり合いになりたくない。いや、なっちゃいけない人だ。俯いて、足早に通り過ぎようとするが、また力強く腕を掴まれて引き止められた。 「待って。さっきは怖がらせてごめん。私の職業は確かに、無法なものだが君を絶対に傷つけたりしない。だから、少しだけで良い。話をさせてくれ」 男の見た目は三十代後半辺りだろうか。それでも鼻筋が通っており、あの人と同じなきぼくろが印象的な儚げ美人だ。その割には恐ろしく力が強いので、人は見た目に寄らないらしい。 「……分かりました」 「ありがとう、じゃあ、車に」 「え、それはちょっと……」 「……そうだね。じゃあ、歩きながら話そう」 そう言って、その人は僕の腕を離した。170㎝の僕の身長をかなり超えるこの人は恐らく190㎝近いのだろう。すらっとした腰は僕のお腹辺りにあった。凄く引き締まっているのだろうと着痩せして見える体を見て思った。夢のあの人はどちらかと言うと華奢でか弱いイメージだったので似てるのは実質顔だけの様な気もする。
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