8. すきといえる

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 真っ赤な顔をしたまま潤んだ瞳で自分を見上げる千紗子に、一彰はどうしようもないほどの愛しさを感じていた。  (ああ。きっともう一生手放すことは出来ないな……)  自分の腕にすっぽりと収まる柔らかい体を抱き寄せる。  力を入れ過ぎれば折れてしまいそうなほどの細い腰。長くて艶やかな黒髪からは、いつも花の蜜のような甘い香りがする。その香りはいつも一彰に、狂おしいほどの衝動をもたらすのだ。  (千紗子の唇には引力のようなものがあるのかもしれないな)  どんなときだって、いつだって、そこに惹き付けられてしまうのだ。  彼女の引力に抗う気なんて微塵もない一彰は、少し前にもこれでもかと味わったはずの小さな赤い実に再び齧りついたのだった。
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