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雨宮がコートを脱いで座り、ビールが届いたのを見計らって、今度は三人で乾杯をした。
彼がビールに口を付けた後、美香は「ちょうど雨宮さんの話をしていたところなんですよ。」と話を切り出した。
「俺の悪口か?」
おしぼりで手を拭きながら彼はにこやかにそう言って、「上司として改善点が有れば遠慮なく言ってほしい」と口にする。
「そんな、雨宮さんに不満なんかありませんよ。仕事も出来て部下にも優しい信頼できる上司ですもん」
真面目な顔で答える美香に、
「そう言って貰えて光栄だな。じゃあなんだろう」
と雨宮は首を傾げた。
千紗子の心臓がドキッと小さく跳ねる。
綺麗な顔の男性が、ちょっと眉毛を下げて首を傾げるなんてそう見られるものじゃない。
(こういうのを「目の保養」っていうんだろうな)
と千紗子は一人心の中で納得した。
「ほら、そういうところですよ。これだから無自覚な美男子は困るんです。それじゃあ女子高生どころか、八十のお婆さんだって雨宮さんの虜になっちゃいますって」
美香は隣の雨宮を上目使いに睨むふりをしてから、悪戯な表情を崩して「あははっ」と笑った。
そんな美香の様子に、雨宮は渋い顔つきになって、ビールをぐいっと呷る。そしてちらりと隣を見てから、恨めしそうに「見てたな」と呟いた。
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