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「話したいことは、これで全部?」
たっぷりと千紗子の唇を味わった一彰が、やっと離れたかと思うと、そう聞いてきた。
「話したいこと……、えっと……」
千紗子は長い口づけの余韻でぼんやりとしてしまい、一彰の問いにすぐには答えられない。けれど、一呼吸ほど黙考したのち、小さく頷いた。
「……はい」
「そう、良かった。じゃあ、これで千紗子は俺のものだ。」
微笑む彼の瞳の奥には隠しきれない劣情が見えて、千紗子の胸がドキンと大きな音を立てる。
その獰猛なほどの色香に、一瞬ひるみそうになる。けれど千紗子はそれに負けまいと意を決し、お腹に力を入れて小さく息を吸い込むと、しっかりとした声で言った。
「はい。全部一彰さんのもの、です」
一彰の瞳が大きく見開かれ、その瞳が濡れたようにきらめく。そしてすぐにとろけるような極上の笑みを浮かべると、千紗子をぎゅっと抱き寄せてその耳元で低く囁いた。
「ありがとう。大事にする。ずっとそばにいて、千紗子」
「―――はい」
一彰の胸の中で、千紗子が幸せを噛みしめながら目を閉じると、その瞼に小さな口づけが落とされた。
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