10416人が本棚に入れています
本棚に追加
手の震えは次第に体中に広がり、頭から血の気が下がって行く。スーッと意識が遠くなりそうになったその時。
左肩にふわりと温もりを感じた。
「大丈夫か?」
低音の声が耳元で聞こえて、遠くなりかけた意識を何とか取り戻す。斜め後ろを振り向くと雨宮がいた。
「雨宮さん」
そう口にしたはずなのに、千紗子の口からは息を吐く音しか出ない。
「無理をするな」
痛々しいものを見るかのような瞳が千紗子を見下ろしたその時、
「だっ、誰だ!!」
リビングから焦るような怒鳴り声が聞こえた。千紗子の肩がビクリと跳ねあがる。
そんな千紗子の背中を「大丈夫」と言う代わりに優しく撫でた雨宮は、千紗子が開けかけたドアをゆっくりと開いた。
最初のコメントを投稿しよう!