3・裏切りと告白

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 千紗子は雨宮から視線を外すことが出来なかった。  ブラウンのフレームの向こうから、黒い瞳が千紗子をじっと見下ろしている。  濡れたようにきらめく瞳に見つめられるだけで、千紗子の体から力が抜けそうになる。  (なんで………?なんでそんな目で私のことを見るの!?)  いつも丁寧な指導する上司の姿は今はない。  彼の目は部下に向けるものではないことくらい、今の千紗子でも分かってしまう。  それくらい、とろけそうなほど甘い瞳で見下ろされているのだ。  視線だけで人を釘付けにしてしまうのは、雨宮だから成せる業なのかもしれない。  老若男女から好まれる端整な顔。仕事の時はサイドに流してある髪が、今は無造作に下されているせいか、いつもの何倍もの色気に溢れていた。  そんな雨宮に、近距離で甘く見つめられたら、千紗子でなくても逃げ出すことは出来ないだろう。  まして千紗子には昨夜の記憶があるのだ。今の状態は、虎の前の仔猫のようなものだ。
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