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「あ、……」
突然千紗子の頭に、ある光景がフラッシュバックした。
ベッドに仰向けになった自分、それを上から見下ろす雨宮。
あの時の彼の瞳は、今とまったく同じものだった。
千紗子の顔が、みるみる真っ赤に染め上げられていく。
「ぷっ」
それまで黙って千紗子を見つめていた雨宮が、小さく噴き出した。反対側に体を捩じって、なにやら肩を震わせている。
(わ、笑ってる………)
職場ではそんな風に砕けた笑い方をする雨宮を見たことがなかった千紗子は、小刻みに震える彼の背を見ながら、唖然とした。
「くっ、くっくっくっ………」
堪えきれない笑い声が、千紗子の耳に届く。
(もしかして私、からかわれたの!?)
お腹を押さえながら背中を丸めて笑っている雨宮を見ていると、千紗子は段々と腹が立って来た。
(こんな状況でからかうなんてっ!!)
雨宮本人に怒りをぶつけることの出来ずに、千紗子が一人モヤモヤしていると、ひとしきり笑った雨宮は、「ふぅ~」と大きく息を吐いた後、千紗子の方を振り返った。
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