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大学三年生の冬から付き合いはじめた裕也とは、この冬でちょうど丸三年になる。
大学を卒業し就職してから、お互い慣れない仕事に忙しく、シフト制の千紗子は一般企業の営業職である裕也とは休日が重ならないことが多く、すれ違いの日々が続いた。
そんな会えない日々の解消にと同棲を始めたのであった。
裕也との生活は全般的にうまく行っている。
一緒に暮らし始めた最初の頃は、生活習慣の違いから小さな衝突も起こったけれど、千紗子が裕也に合わせる形で、自然と落ち着いてきた。
一緒に暮らしていても、勤務時間のバラバラな二人が一緒にいられる時間は多くはない。
気付くと二三日ろくな会話をしていない日もあるけれど、夜中にふと目が覚めた時に隣に寝ている裕也の顔を見られるだけで、千紗子は小さな幸せを実感するのだった。
裕也は人当たりが良く優しい。
面倒見の良い彼は同僚や後輩から頼られることも多く、休日に携帯が鳴ることが多々ある。
いつも重なるわけではない二人の休日に、仕事のこととはいえ他人からの邪魔が入るのは少し嫌だ。
けれど文句を言って裕也を煩わせたくない千紗子はそれを口に出さなかった。
少し寂しくはあったけれど、会社の同僚たちから頼られる裕也を頼もしく思えるし、外ではしっかり者の彼が、家で自分に甘えた姿を見せるのも、それだけ近く心を許した存在なのだと嬉しかったりもする。
付き合って三年経つ今は、付き合いたての頃のように四六時中相手のことを考えていたり、一緒にいる時もベタベタしているわけではない。
けれど、強がりで愛情表現下手な自分のことを裕也は理解してくれているし、自分もまた同じように彼のことを分かっている。
きっと自分たちにはこれくらいでちょうど良いのだ、と近頃では思うようになっていた。
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