ブレインクリーニング

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『ブレインクリーニング』 〜あなたのいらない記憶、クリーニングします〜  大行列の大盛況だ。    最後尾に並び待つこと二時間。ついに順番が回ってきた。  史明は学生時代にイジメにあっていたのでその記憶をクリーニングしてもらうらしい。  俺はあの音楽の記憶を消し去って貰う。 「これが終わったら、俺たち別の人間みたいになってるんかな」  興奮する史明だったが、俺は冷静だった。  消し去りたい記憶がなくなっても、自分は自分だ。誰かに変わることはない。  席に座るとヘッドギアをつけられた。脳波を読み取る機械だとか言われた。  ヘッドギアから繋がってるパソコンの画面にアルファベットや数字や記号が映し出された。それらが画面いっぱいになると文字に変換される。それを繰り返した。  しばらくすると画面に良い、悪い、その他に分類された項目が現れた。自分の中の良い思い出は良いの方に。良くないことは悪いの方に。どちらともつかないものがその他に振り分けられていた。  俺の消したい記憶はその他に分類されていた。彼女との記憶は良いところと悪いところがあると言いたいのだろう。  悪いには、子供の頃道路に飛び出して轢かれそうになった事や恐喝にあった事などが入っていた。  そういえばそんな事があったなぁと思いに(ふけ)った。 「それでは消したい記憶を選んでください」  係の人に言われ、その他のところにあるあのバンドを選んだ。  これで彼女との苦い思い出も綺麗さっぱりなくなる。未練もなく前に進める。 「それでは始めます」  係の人がスイッチを入れると頭がぼやっと暖かくなった。冬の布団の中で二度寝をしている感覚に近い。 「はい、終わりました。お疲れ様でした」  俺は立ち上がった。  何の記憶をクリーニングしてもらったのだろうか。さっぱり覚えていない。まぁ覚えていたらクリーニングされてないことになる。
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