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そのあと運ばれて来たアフタヌーンティー用の3段ケーキスタンドに載せられたサンドイッチ、スコーン、ペストリーはどれも美味しく、お夕食がまだだった私も柊木さんと一緒にパクパクと食べてしまった。
そのせいでお腹いっぱいになってしまい、その後のディナーは遠慮させてもらった。
「お前…ホンマに要領もタイミングも悪いよな。夕飯、A5ランクの松坂牛やったのに…」
「いやいや…十分満足です…。」
「ま、それは次回のお楽しみってことで!俺は夕飯も食うけどな!」
大きな柱時計はもう21時近くを指してたので、「じゃあ私はそろそろ…」と安物のコートに手を伸ばす。ゲストルームを勧める柊木さんと林田さんを「明日も仕事だから」と丁寧に断って、そそくさとソファから立ち上がった。
これからお夕飯を食べるんだとばかり思っていた柊木さんは、「当然」と言った顔で私と一緒に玄関を出て、先ほどの真っ白い車の助手席のドアを開けて先に私のことを乗せ、そのあと自分も運転席へと滑り込んだ。
…そうか、執事が運転できないから…。
私が助手席に乗ってしまったせいで、どうしたもんかと困惑している樹の顔が見える。
私も「あれ?樹は…」と訊こうとしたところで、柊木さんに「ナビに住所、入れといてもらえる?」と言われてしまった。
柊木さんが左側の窓をスーッと下げ、外にいる樹の顔を見上げた。
「樹は待っててええで!
帰り道ぐらい、お姫様と水入らずで話したいからな!」
水…もとい執事の樹は苦々しく顔を歪めながらも、私の席の方まで回って来て、コンコン…と窓ガラスを軽くノックした。
慌てて下げた窓の隙間からヒョイっと綺麗な顔を覗かせると、「…んじゃ、気ぃつけて。」と小さな声が聞こえてくる。
「うん、樹とも久しぶりに会えて嬉しかったよ!たまには連絡ちょうだいね!」
にっこりと笑いながら手を振る私に、少し困ったように眉を下げたまま微笑みかける樹。
なんだか泣きそうに見えて、何かもう少し言葉をかけようかと口を開いた瞬間、
ブォォオン!と低く唸るようなエンジン音が聞こえて来て、地上にごく近い高さの景色が、瞬く間に後ろへと流れ出した。
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