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執事ってあの執事???
メイちゃんのとか、黒いのとか、花輪くんちのとかの……
あの〝執事″???
いじめっ子ジャイアンだった樹が???
「…ま、一応そーやな。」
「大学で遊び過ぎて就活ヤバい!ってなってたから、許婚の件の恩返しのつもりでウチに来てもらったんよ!気心知れてるから、俺もあれこれ言いやすくてラクやしな!口も態度も悪いけど!」
「ふん、うっさいわ!1人じゃ何もできひんくせに!」
なるほど、そーゆー事情なのか。
樹は意外としっかりしてるから、態度と口調に目を瞑ってもらえるなら、仕事自体はちゃんとやってるのかもしれないな。
「…なぁ。
家着く前に、本題話し終わってもーたけど。…これから行ってどーするん?」
確かに。
もう、聞きたかったことはあらかた聞いてしまった。
「ええやん!俺、由梨ちゃんとゆっくり話してみたいもん!せっかくこうして拉致して来たんやし、このまま俺んち来てもらお!」
そうか。
私は、拉致されたのか。
曇り1つ無い車の窓から、キラキラと輝く冬の空を見上げる。
やっぱりまだ実感は無かったけど
誰かが私を呼ぶ声が、
どこか私の知らない遠い遠い世界から、聞こえて来たような気がした。
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