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14
ワカサギ釣りから帰った瞬間、大慌ての女将さんに聞かされた事故の話。
そのまま飛び乗ったタクシーで、一目散に向かった地元の大病院。
真っ白の病室のベッドには、包帯だらけの由梨ちゃんが横たわっていた。
とりあえず、命があったことにホッとする。
一緒に生きて、一緒に死のうと
そう誓ったはずなのに。
まさかこんなに早く一人で幕を引いてしまうなんてこと、受け入れられるはずがない。
近くの丸椅子にそっと腰掛け、眠る横顔を恐る恐る覗き込む。
どうして、樹と一緒に車に乗ってたんやろ。
樹が迎えに来た?
けど、それに応じたん?
聞きたいことがいっぱいある。
けれどまずは、安心させてあげないと。
「まだ生きてるで」って。
「まだ一緒に生きられるで」って。
今までで1番優しい笑顔で笑って、きっと怖い思いをしたであろう由梨ちゃんを落ち着かせてあげな。
そんな風なことを考えながら、どのくらい時間が経った時か。
ずっと飽きずに眺めていた顔がピクリと動き、そっと音もなく、その瞳が開いた。
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