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樹は仕事を辞めることになり、その後それぞれ新しい職を見つけた2人は結婚したと聞いた。 擦り切れそうな本能が呻き声を上げる。 けれど前を向かなければ。 一度でも後ろを向いてしまったら、俺はもう二度と前へは進まれへん。 どうせ死んだ心。 生まれ変わったと思って、新しい自分を探すしか無い。 だって命よりも大切なあの人は もう俺のことを、愛してはくれないんやから。 どんな伝手を辿ったのか、ミカコちゃんがこっそり見せてくれた由梨ちゃんのウェディングドレス姿の写真は、あの世へ行っても忘れられそうにないほどに、綺麗やった。 「……これを機に、もう〝許嫁″の占いなんてヤメたろ!別にええやん!!世の中は広いんやから! 誰と出会って恋に落ちたって自由やん!おかしいやろ、1人しかあかんなんて!」 ミカコちゃんは無理して笑って、 「そうだそうだ!光雅様は社交界で1番人気のイケメン紳士なんだ!これから誰だって選り取り見取りだー!」 と、銀のトレイを振り回しながら、賛同してくれた。
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