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あれからもう、どれだけの月日が経ったのか。 俺は結局のところ、2回結婚に失敗した。 生まれた子どもには許嫁の祈祷は行わず、俺自身は今現在、有名な大学病院の個室のベッドの中で、独身として生涯を終えようとしている。 何の前触れもなく止まりかけている心臓を、俺だけが理解しとる。 たまたま誰もいない病室。 繋がれた計器の類が無反応なのは、まさかまだ罰が続いとるからか。 でも、1人でも別にええよ。 ホンマに一緒にいて欲しい人がおらんなら 1人でも、別にええ。 最期の最期。 オレンジの夕陽が差し込む、無機質な駄々っ広い病室。 それはまさに、御伽噺のような奇跡の光景。 あの旅立ちの日に車窓から見た、お姫様のドレスのような光が病室へと差し込み ベッドの上で1人ぼっちの俺のことを まるで天国から伸びる梯子のように、迎えに来た。 「…やっぱ可愛ええやん、そのズドーンとしたドレス。」 暖かな光の先には 青い薔薇の花束を抱えたあの人。 昔々、遠い世界に置いて来たお姫様。 この世でただ1人の許婚。 運命の〝番″。 「やーっとまた会えたなぁ…今度こそ結婚する?」 懐かしい運命の人の瞳が あの頃よりも、もっとずっと優しく 俺だけのために、細められたような気がした。 【END】
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