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「機材の調子がどうしても悪いみたい。スケジュールの関係もあるから今日中に撮影はしないといけないんだけど…」
「うん」
「最低でも2、3時間は調整やなんやかんやで掛かるみたいなの」
「そっか…。うん、分かった。仮眠でも取っとく」
「そうね…最近、特に撮影がハードだったもんね。こういうトラブルも休息のご褒美をもらったってことで」
「うん、そうだね」
「じゃぁ、撮影の目処が立ったら起こしに来るから」
「うん…あ、百合子さん」
「なに?」
「わざわざ控え室までこなくても、携帯に電話してくれたらいいよ。ここの撮影には慣れてるから。ちゃんと行くから」
「そう?ホントに大丈夫?」
「大丈夫だよ、百合子さん。小さな子じゃないんだし。これでも18歳です」
「あはは、うん、ちょっと過保護すぎたかな?」
「ちょっと、ね」
くすくすと二人で笑ってから、百合子さんは控え室から出て行った。
マネージャーの百合子さんだって、かなり疲れているはず。
ずっと私のスケジュールで一緒に動いてくれているし、他にも色んな調整やトラブル対処だとか…
そんな百合子さんの仕事を、少しでも減らしたかった。
「…じゃ、寝とこうかな…」
控え室の鏡の前で座り込んでいた身体を立ち上がらせた。
部屋の角にカウチソファが置かれている。
そこに向かう為に。
雑誌の中でキラキラとした笑顔を見せていた『serina』。
…あれは、本当に私なのかな。
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