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気のせい、だから。 さっきすれ違った時だって、全然、気付かれてなかったんだから。 偶々、見ていた見知らぬ女子の視線を感じてふと見ただけ、それだけ、だよ。 そう思う胸の内とは裏腹に早歩きの所為ではない鼓動の速さを感じる。 足もまるで逃げ出すかのように動いている。 ちょうど道がカーブして後ろから自分の姿は消えてしまうようになったところで、足を止めた。 「はぁーー」 カーブで曲がったところの家の外壁に背中をつけて大きく息を吐いた。 「セリナ」 「え?」 いきなり名を呼ばれて、声のした方へと顔を向けてしまった。
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