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「この通り、見た目は胡散臭いですが仕事はちゃんとやりますよ」
と御園を安心させようと香苗が口添えする。
(胡散臭いは余計だ)
「お話を伺ったうえでこちらで最善の提案をさせていただくことでどうでしょうか?」
香苗の余計な口添えに文句を言いたいのを飲み込んで達也は人当たりの良い笑顔を向ける。
それに返って来たのは躊躇うような空気。
短い沈黙の後、ようやく依頼の件について話を始めた。
「残されたはいいが持て余してしまって。……もう忘れたいんです」
最後はほとんど聞こえないくらいの消え入りそうな声だった。
達也の隣に座る香苗には聞こえていない。
びっくりして顔を上げると達也の視線に気づいたのか御園は何事もなかったかのように綺麗に笑う。
「僕にはいらない物なので、売れるんだったらいくらでもいいから売ってほしいんです」
そういう御園は綺麗な笑顔だが、売り急ぐとは何か引っかかる。
「失礼を承知で確認させていただきたいのですが。見たところあなたはお金には不自由していないように見受けられる。どうしてその家を売りたいのかよろしければ聞かせていただけませんか?」
紹介されここに来たということは普通の物件ではないということだ。
「先日ちょっと困った事がありまして……」
言葉を選ぶように御園は言いよどむ。
(いくらおかしいと思っても普通はここまでしない)
その声は言うべきかどうか悩んで、重苦しい。
「大丈夫です。ここには困った方しかお見えになりませんから。どうぞ遠慮なくおっしゃってください」
「呪われた家なんです。……僕には視えないんですけど。少女のお化けが出るらしいんです」
達也が安心させるように笑うと、諦めたようにつぶやいた。
(どストライクってわけかい)
「父が見つけて来た古い洋館なんですが。前の持ち主がイギリスの貴族の館を移築したらしくて築百年は経っていて古いけど作りは豪勢ですよ。僕も中学を卒業するまで住んでいました」
古い洋館というのは一般にはあまり需要がない。
日本の気候に合わせて作られていないことが要因だ。
しかも土地が広く、建物が古くて維持管理にお金がかかるという欠点が足を引っ張る。
個人で所有するというよりどちらかというと企業向けのテナント物件になることが多い。中には洋館に住みたいという金持ちもいるが、最近の不景気で稀である。
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