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アカネは、ある日いきなり、おばあさんがどこからかうちへと引き取ってきた。
アカネと初めて会った日は、その暗く落ち込んでいるような表情が気にかかった。アカネに、私と同じような感情があればの話だけれど。
生まれつき体が弱いらしいアカネの体調を、私はいつも心配していた。
私は、おばあさんとアカネとの三人家族で暮らしていた。親の顔を、私は知らない。
私もおばあさんもよく外へ出かけていたので、アカネを少し寂しくさせてはいないかと思うときもあったけれど、アカネ本人はあまり気にする素振りもなく、毎日を過ごしていた。
おばあさんはことのほかアカネをかわいがっていたし、私もアカネのことは大好きだったので、愛情に関してはたっぷりと注いでいた自信がある。
アカネも、私によくなついてくれた。普段はツンとしているのに、私といる時だけは明らかに顔が明るくなったので、これはうぬぼれではあるまい。
ある日、おばあさんが体調を崩し、もう長くないという話になった。
私が知らなかっただけで、実はおばあさんは、結構なお金持ちだった。
そのおばあさんが、死ぬ前に書いた遺言を、自ら親戚を集めて公表した。そこには、なんと、全財産をアカネに譲ると書かれていた。
もちろん、そんなことはまかり通るわけがないのだけど、おばあさんは様々なつてを使って、
「アカネに、ある程度の額を渡すことができないなら、遺産の大部分はどこか適当な団体に寄付する」
という取り決めを強行してしまった。
イリュウブンがどうの、ケイテイシマイやチョッケイシンゾクがどうのという話は難しくて私には分からなかったけど、このままでは他の親族がもらえる分が大きく目減りするのは確かなようだった。
「おばあさん、あのう、私に遺産は?」という思いはあったけれど、私はアカネほどには愛されていないのは確かだったので、仕方がないかなと思った。
そんなやり取りを、アカネはわけも分からない顔で聞いていた。
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