雪ウサギ

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 「う~!寒い!」 傘を持った左腕に着けているお気に入りのネコの文字盤の腕時計をみると、12時43分だった。 あと7分で電車はやってくる。 携帯電話をみていれば7分なんてあっという間の時間なのだろうけど、傘を片手に持って両手に手袋を嵌めている状態では、操作の仕様がない。 こんな時の7分は想像以上に長い。 その間、ずっと腕時計の文字盤の中で向き合ったミケネコとシロネコの回りを規則正しく動いている赤色の秒針を見ていた。 やがて、待ちかねていた2連結のオレンジ色のディーゼル列車がやってきた。 日中なのに振り続ける雪のお陰で、列車のヘッドライトをランプの中の走馬燈のように柔らかく灯らせていた。 ゆっくりとホームに入ってきた列車は、まるでブリキのおもちゃのように、ゴトンゴトン・・ ゴトンゴトン・・ そして、プシューと言う音がして、停まった。 車内の寒冷予防のため、扉は勝手には開いてくれない。 その事を思い出して、列車の開閉ボタンを押すと、オレンジ色の扉はガコンと言う音を出して、それから左右に開いた。 私は、肩と傘の上にうっすら積もった雪を払って、車内に入った。
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