雪ウサギ

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「やぁ、よく来てくれたね。」 パパの服装は、黒色のダウンジャケットの大きく開けたファスナーの隙間から、スカイブルーのYシャツと少し派手めの黒地に銀の縁取り刺繍のベスト、スラックスは黒のストライプだ。靴は黒のスノーブーツだった。 サラリーマンだった頃の、お世辞にもセンスが良いとは言えなかったパパの姿からは想像できない。 「まぁ、年に一度か二度の事だしね。」 顔を見られるのが照れくさくて、ドアの向こうの雪景色を見てそう言うと、 「ありがとう、サク。」 そう言ってパパは笑った。 今回、私がこの山奥のカフェ兼ゲストハウスに来たのは、主に親孝行のためなんだけど、その内容をもっと具体的に言うなら、ほとんどが掃除だ。 こんな雪深い山奥の、カフェ兼ゲストハウスを男一人で切り盛りしているのはすごいと思う。 トイレや浴室は毎日清潔に掃除しているらしいけど。 でも、どうしても照明器具や床掃除がおろそかになってしまうので、今回は私がその辺りをキレイにする予定だ。 しばらく車に乗っていたけど、川沿いの道を左に曲がってすぐに見えてきた。 茅葺き屋根の上を、真っ白い雪でコーティングされた家。 垣根も庭も真っ白だ。 まだ降り続ける雪は冷たく、風は冷たいけど、とてもキレイだ。
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