3.過干渉な親

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3.過干渉な親

増田有紗、4月から社会人!地方配属になったお陰で今日から一人暮らしが始まる。  今までは本当に散々だった。うちの親はわたしのやることなすことにいちいち干渉してくる。本人は過保護かもって思っているらしいが、これは過保護ではない。過干渉だ。まず、普通だったのは幼稚園の時までだった。幼稚園に行って終わったあとは友達の家や自分の家で遊ぶ。それが小学校に入って一気に変わった。まず、平日に遊ぶことが許されなくなった。平日は宿題と通信教育と親の買ってきたドリル。全て答えは母が持っており、母が採点し、間違った問題は答えが合うまでやり直すためかなり時間がかかった。それが終わればゲームをやることが許された。でも、ゲームは1日30分までやるのもリビングでタイマーをかけられていたためかなり落ち着かない中で遊んでいた。平日の遊びに行くことが禁止されていただけではない。休日に遊びに行くこともあまりいい顔をしなかった。休日だって勉強に休みはなかったからだ。とは言ってもやることは午前中にはほぼ終わる。午後から遊びに行く分には問題なさそうなのだが何故か嫌な顔をされた。そのため、遊びに行く回数もだんだん減っていき、長期休暇に2.3日程度遊びに行く程度になってしまっていた。しかも、門限は17時。母はとにかくわたしを自分の監視下で遊ばせたいらしく家のリビングで遊ぶことを強要してきた。だから、友達を家に来るよう誘導してあまり人の家や外で遊ぶことはなかった。家のリビングで遊ぶというのはなかなか辛いものがあった。言動が全て母に筒抜けなのだ。もちろん気に入らないことが有れば友人の帰宅後に説教が待っている。遊んでいる時間はもちろん楽しいが半ばテストのようでもあった。だから、わたしにとっては学校が1番の落ち着く場だった。長期休暇は地獄だった。  中学生になってからも過干渉は止まることを知らなかった。流石に家のリビングで遊ぶことは強要されなくなったが、門限は相変わらず17時だった。中学生なんて夏は19時近くまで部活をやっているのだから問題ないと思うのだが遊びは別らしかった。お陰で夏祭りに友達と行くこともなく親と行くという半ば公開処刑のようなことをされていた。それに部活の帰りはいつも友達と帰っていたのだ何故か母親が徒歩でいつも迎えに来るのだった。友達と帰っているのだし、わたしの家より友達の家の方が遠かった。わたしが一人になる時間はないのだから来なくてもいいのに毎日迎えにきた。友達と楽しくおしゃべりをしていると通学路を歩いてくる母親が見えるのだ。恥ずかしかった。母親は「気にせずおしゃべりしてね!」って言ってくれていたけれど気にせず話せるわけがなかった。もちろん友達との話は全て聞かれており、わたしが母親が気に入らないことを言えば家に帰って怒られたし、友達が母親の気に入らない言動をした時もなぜ注意しないのか怒られた。本当に落ち着かない時間だった。それでも一緒にいてくれた友達には感謝しかない。  高校に行っても相変わらずだった。門限は17時だったし、学校に行く時には駅まで着いてきたし、帰りは駅まで迎えにきた。門限は一度だけ夏は18時になったことがあった。それもいつしか「17時には帰ってくるよね?」の言葉とともに17時戻された。相変わらず、長期休みしか友達と遊んだことはなかった。学校の帰りにどこかに寄ることもなかった。だって母親は何時の電車に乗ったのかわたしにメールをするよう強要していたし、いつもの時間にメールがないと「今どこにいるの?」というメールがしつこくくるのだから。   大学に入って家を出れば自由になれる。そう思っていたけれどそんなに甘くなかった。まず、一人暮らしではなく寮に入るように言われた。その寮が厳しかった。門限22時。サークルの飲み会の一次会ですらギリギリ最後まで参加できるかどうかの時間だった。大学に行ったら友達と渋谷や原宿で買い物して、カラオケオールしてとか考えてたのにそれも出来なかった。そもそも厳しい生活に慣れていた私は遊ぶことや夜遅くまで出歩くことに極度に罪悪感を感じていたのだ。だから、周りのみんなのように遊べるようになるまでかなり時間がかかった。私は全然大学生活を楽しめなかった方だと思う。やっと罪悪感なく遊べるようになった頃には就活の時期だった。就活はどうしても実家に帰りたくなくて実家のある地域にオフィスがない会社を選んで受けて行った。そして無事に内定をもらい、実家から離れた地方に配属が決まった。配属先は大学のある東京より実家から離れている。だから、大学の時みたく親も気安く遊びに来れないはずだ。  4月から社会人ということで2月末だけれどもう家は探さなければならない。オフィスから近いところを何件かピックアップしてみた。ここも良さそうだなぁ、あ、ここもいいかも!そんなことを思いながら物件情報を眺めていると電話が鳴った。親からだ‥‥ 「もしもし‥」 恐る恐る電話に出てみる。 「もしもし!有紗ちゃん?もう家探さないとダメよねえ。こっちでもお父さんといろいろ見ているの。家は南向きで、オートロックがあって、駅から徒歩5分以内で3階以上じゃなくちゃダメよ。それでこっちでも探しておくから有紗ちゃんの方でもいい家あったら送って。じゃあね。」 一方的に話され電話は切れた。にしても新居の条件厳しくないか?それじゃあ、家賃が結構高くなる。私は貯金したいから家賃は安めにと考えていたのに‥‥ 結局私が良さそうと思っていたところは何かしら条件が合わず全てダメになった。 「はぁ‥」 結局社会人になっても親に口出しされる人生は変わらない。明るいと思っていた未来が一気に暗くなった。    
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