4. 子どもを貶す親

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4. 子どもを貶す親

「子どもは信じてもらえないと感じると嘘をつく。」そんな話を聞いたことがある。たしかにその通りだと思う。わたしも親と暮らしていたころはよく嘘をついた。理由は本当に事実を言っても信じてもらえないからだった。  わたしの母親はわたしのことをとにかく貶してきた。性格が悪い、嫌な子と言われることは日常茶飯事だった。別にそこまで言われるほど意地悪なことをしていたわけではない。少し気が利かないだけで、そんなことに気がつかないなんて性格が悪いのねとか嫌な子ねとか言われてきた。だから、ちょっとしたことで貶されるのではないかといつも気が気でなかった。母親はわたしが失敗すれば何を言っても貶す、そう思っていた。だから、私は嘘をついて自分を守ることを覚えた。  子どもの頃ついた嘘で覚えているものが一つだけある。小学校高学年の時だ。その時は算数の授業は単元ごとにテストが行われており、テストの結果と本人の希望を合わせてA.B.C3つのクラスに分けられていた。Aが応用も解けるようにするクラス、Bが基本的なことを解けるようにするクラス。Cがじっくり時間をかけて教えるクラスだった。わたしはテストのたびにAを希望していた。毎回Aクラスだったけれどある時Bになってしまったことがあった。その時咄嗟に思ったのが「やばい!お母さんに怒られる!」だ。母親はことあるごとにわたしを叱ってきた。ほぼ毎日のように何かしらで怒られていたし、貶されていた。自分は勉強が苦手だったくせにわたしがテストで間違えるととにかく怒ってきた。そんな母親にクラスが下がったと伝えたらなんと言われるか、わたしが思い浮かんだのはこの言葉だった。 「あんたは自分が頭いいと思って調子乗ってるからそうなったのよ。」 絶対にそういうことを言うと思った。でも、わたしは一度も自分の頭がいいだなんて思ったことはない。周りに頭のいい人なんてたくさんいたから。なのに、そんなことを言われるのはつらいと思った。だから、嘘をついた。 「Aクラスの先生が次回から変わるって先生に言われたから自分からBクラスを希望したんだ」って。実際に担当の先生は突然変わっており、わたしが苦手な先生になっていた。でも、もちろん前もってそれを知っていたわけではなかった。その言い訳を母親は信じ、なんとか嫌味を言われずにその場はやり過ごしたっけ。その後授業参観でママ友同士の話でわたしの嘘がバレてかなり怒られたけど。それ以外にも嘘はついただろうけど忘れてしまった。でも、信じてもらえないから嘘をつくは正しいんだなと思う。  貶すといえば、母親は芸能人をよく貶していた。テレビを見ていて自分の苦手な芸能人が出ると「わたしこの人嫌い。テレビなんて出なきゃいいのに。」とか「この人のわたし生理的に無理。」とか永遠に言い続ける。そんなに嫌ならチャンネルを変えればいいものの、替えもせずにひたすら悪口だけを言い続ける。聞かされている側もかなり気が滅入る。そんな中で過ごすうちに自分の好きな芸能人が貶されるのが怖くて好きだと言えなくなった。芸能人だけじゃない。自分の好きなものが貶されるのが怖くて好きだと言えなくなった。それは母親に対してだけではない。友達に対してもだ。好きなものを好きと言えない。そして、貶されるのが怖くてちょっとしたことでも嘘をついてしまう。そんな大人になってしまった。大人になるとみんな趣味が合う人同士で仲良くなる。わたしは好きなものが言えないから誰の仲間にも入れない。謝ればいいことでも嘘をついてしまうからなんとなく気まずくなって距離を置かれてしまう。小さい頃に学んだ自分の身を守る方法は社会では通じないものだった。わたしはこれからどう生きればいいのだろう、、、    
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