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青年がひとり流れ着いた場所は無人島でした。
「ここはどこだ……」
目を覚ました青年は、開口一番、辺りを見回しながらそう呟きましたが、それに返ってくる人の言葉はひとつもなく、青年の耳に届くのは寄せては返す波の音だけでした。
意識を取り戻したばかりの思考はまだ混濁していて、青年は自分が天国か地獄にいるもの、と勘違いしていました。生きていることのほうが不思議に思えるほど、意識を失う直前の青年は、揺るぎのない死を覚悟していたからです。
青年はずぶぬれになった服を脱ぎ、ほおに付いたり口内に侵食したりする泥土を払ったり吐き出したりしているうちに、じょじょに生きている、という実感を覚え始め、喜びと恐怖が混じったような強烈な感情が込み上げてきました。おもわず感情がのどを通って口から唾とともに飛び出したのは、叫び、でした。
生きている。俺は、生きている、と。
そんな想いとともに吐き出された青年の叫びは、のどが嗄れるまで続きました。
奇蹟だ。
と青年は空を見上げました。
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