episode9 いつかその時が来たら

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そうして高層階に着くと、ドアの前でまたインターホンを押してみた。 ま、いっか。あいつなら。 そう思って握っていたスペアキーでドアを開けて中に入る。女がいたりするかな?いやいや。ま、いっか。 「カイ、いる?おーい!!オジさーん」 英語でそう言うと、寝室のドアは開いていて、そこから真っ裸のカイが現れた。頭ボサボサで無精髭。パンツだけ履いて、頭をかきながらあくびをしてあたしの前に来ると、あたしは思わずそこで仁王立ちだ。 「瑠生。お前、なにしてんだ?朝っぱらから。欲求不満?匠は考えてる時は、エッチできないタイプだから……」 「そういう話しはいいんだけど!!カイにお願いがあるんだ」 「お願い??なに?」 カイは、コロンビア人。元、軍人。匠を軍人として育てた男だ。基本、スペイン語だけど、あたしはスペイン語は話せないから、カイと話す時は基本、英語だ。黒髪が少し伸びて耳が隠れるくらいあるし、無精髭も少し伸びてきた。カイは顔を洗いに洗面所に向かって歩いていくと、あたしはカイの後ろについていって、 「カイ、一人?」 と訊ねると、カイは蛇口から水を出して顔を洗っている。顔を洗い終わってタオルで顔を拭くと、今度は歯ブラシに歯磨き粉をつけて歯ブラシを口の中に入れて、すぐに歯を磨いている。 「テラは?」 「いると思うぞ」 「仕事は入ってないよね?」 「多分な」 あたしはニコッと微笑むと、 「じゃ、あたし、ロスに行きたいの!なんとかしてよ!」 とハッキリ言うと、カイは驚いて振り向きあたしを見つめた。
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