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俺は呆れて物も言えない。あんなに、勝手に動くな、と言ったのに、その舌も乾かぬうちに、ハワイから飛び出して、瑠生はすでに日本に行き、今はロスに向かっているそうだ。さすがに俺の手に負えない。俺が動こうにも、もうハワイ警察から目をつけられているし、おそらく空港から飛び立つことはできないだろう。
なのに、あいつはテラと行動するなんて、ほんとに馬鹿なのか…?!
系斗はまだ俺の前に姿を現さない。ということは、日本にいるのか。はたまた瑠生を追っているのか。まあ、いいよ。もう、勝手にしてくれ。瑠生が頭にくるのは、よく分かる。まあ、今回は瑠生に任せて、俺はここで待ってるか。
俺はため息をついて、ソファに足を伸ばして目を瞑って、フッと微笑んでしまった。
梨花も、流石に今回は悪気はなかったにしろ、結果的に恨まれても仕方ないか。まったく。後先考えないからこうなるんだ。
そこに、カイが歩み寄ってきて、
「あ、仕事の依頼来てるぞぉ。俺、暇なんだよねぇ」
と言って、ファックスから一枚紙を取り上げて俺に差し出した。俺は目線だけをカイに向けて紙を受け取ると、依頼内容を確認してニヤッと笑みを浮かべた。
「しゃーないか。カイとマシューで動いてもらうかな」
「お前もやれば?」
「え?いや、二人で十分だろ。マシューなんか、暇すぎて射撃場から出てこない。ずーっと撃ちまくってる。あれ、系斗に頭キてるんだろ」
俺はそう切って吹き出して笑うと、カイも笑ってコーヒーを作りにキッチンに入った。
「ま、お前も苦労するなぁ。瑠生の無鉄砲さに」
「全くだよ」
俺とカイはそう話しながら、顔を見合わせて笑い合った。
今に始まったことじゃないけどな?
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