episode9 いつかその時が来たら

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あたしはそう言って梨花を見つめると、梨花は涙ぐんで小さく頷いてきつく目を閉じた。 「分かったわ。…いつか。…いつかきっと、雪子と理に謝りに行く。許してくれなくてもいい。私がしてしまったことを…ちゃんと謝罪する。そんなつもりがあったわけではなかったにしろ…雪子を苦しめてしまったことに変わりはないから。私は、大したことじゃないと思ってた。喜んでもらえるなら、と思ってやったことでも、こうしていつの間にか誰かを傷つけてた。理が私のファンだったって聞いて、素直に嬉しかったし、…私も甘えてたんだと思う。別に下心があったわけじゃないけど、嬉しかったのは、認める。普通の人に頼まれたら断ったことでも、理に言われたから、大地くんのことも何かしてあげたいと思った。たしかに、昔からこういう性格なの。そうやって、男の人と一緒にいて、その彼女に疑われることも多々あった。私は……分かってた。…いいえ、分かってたつもりだけど、本当は…分かってなかったのかもしれない。それが、いいことなのか悪いことなのか。大したことじゃないってタカをくくってきたんだわ…。こんなふうに叱ってくれる人もいなかったし、言われるまで、実感できなかった。…瑠生。教えてくれて、ありがとう。それから……あなたにも…ごめんなさい。出会った頃、あなたの前でも匠に迫ったこと…。嫌な思いを、…させてしまったわ」
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