episode 1 ハワイに来た女優

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* 「瑠生!」 みんなに呼ばれて、あたしは顔をあげると、イイ波が来て、みんなが海に駆け出した。あたしもボードを小脇に抱えて、笑いながら海へと一気に駆け出していった。 長い年月を超えて、あたしと匠が恋人という関係に変わったのは、だいぶ先だった。22歳。両親の仇である最悪の敵、カルテロに誘拐されてアメリカに連れてこられて、匠を誘き出すために拉致られて、拷問されて…。そこで匠への想いに気がついた。あたしの背中には、その時拷問された鞭の痕がくっきりと残っている。ボードしていても、みんながあたしのビキニの背中を、驚いて振り返って見ていく。でも、隠したりなんかしない。あたしはこの傷と引き換えに匠を手に入れたのだから。 これが、あたしの愛の勲章なんだ。 あたしと匠は、恋人同士になってから、ニューヨーク、日本を経て、ここハワイにやってきた。 * ボディボードを終えた頃、海とはミスマッチな人物がやって来た。全身真っ白で、違和感しかないその男。匠より年上だってことはわかるけど、はっきりとした年齢を言わない。基本的には中国語、主に広東語を話し、日本語はとても流暢だから、日本人と言っても誰も疑わないだろう。そして、英語も、フランス語もスペイン語も話せる…何者なんだろうとさえ思う。
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