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優人は自分自身と戦っていた。
兄に欲情するたびに抑えきれない本能が顔をのぞかせる。それは耐え難い不安を呼び起すのだ。
ある博愛主義を謳う国では、不倫が許されるものであるという事実を知った。
とは言え、当然のことながら誰もするわけではない。人は人。自分は自分と分けている人が多くいると言える。
それはその国の考え方であり、言わば文化なのだろう。不倫よりも、パートナー間での性交がなくなることの方が問題視され、非難されることだと言う。
つまりそれは日本で男が都合よく言う『不倫は文化』というのとはニュアンスが異なるのだ。
日本人が言い訳として言う『文化』や『慣例』は先人がやっているから、みんながしているから『悪いこととわかってはいるが』やってしまう、許されるだろうという甘えに過ぎない。
だが某国の場合は『パートナーを満足させられない』から不倫されても文句は言えないという意味合いに捉えられる。
──とんだ博愛主義だな。
ただの性欲重視主義に過ぎないのに。
他人は性欲発散のための道具じゃない。
そんなのは愛じゃないと優人は心の中で強く否定した。
愛する人が自分以外の人と肉体関係になろうと無関心なのだろうか?
傷ついたりはしないのだろうか。
自分自身の性欲を優先し、身勝手になれる人たちのいう博愛主義とは何なのだろう?
彼らのいう愛とは自分の性欲を満たしてくれることなのだろうか。
理解しようと努力しても理解出来ない文化だと思う。
それでもやはり複雑な心境にはなる。男にとって性交には快楽が含まれるものだから。愛しいから求め合いたいと望んでも、自分の中の本能まではどうにもできない。
──葛藤は宿命。
人は人である限り、葛藤と覚悟の連続だ。
まともでいたいと願えば願うほどに、矛盾に苛む。
そしてまともとは、自分の理念の中にある。そうなってしまえば理想と現実の相違にまた苦しむことになる。
だがそれが自分が選んだ道。
どんなに苦しくて辛くとも、自分自身と戦い続けるだろう。
愛しい兄とずっと一緒にいたから。
つぷっと和宏の秘部に指を潜り込ませれば、
「あ……優人っ」
彼はびくりと身体を震わせ、ぎゅっと優人にしがみつく。
一番恥ずかしいところに自分を受け入れて、羞恥と快感の狭間で揺れる彼が愛しくてたまらなかった。
何度も口づけ、秘部を犯してゆく。そうして理性をはぎ取り自分を植え付ける。
「はあッ……」
苦し気に呼吸する彼の首筋に唇を寄せ、愛の印を刻む。何度繰り返そうが満たされるのは一瞬でしかない。もっと欲しいと貪欲に求めてしまう自分を止めることなどできはしない。
──俺は狂っているのかもしれない。
それでもやめることなんてできない。
ホンのひと時であろうと、乾いた心を満たしたくて兄を求める。
和宏が自分にくれる明確な特別。
飢えと渇きに耐えられなくなって、愛を求める。
こうなってしまった原因が何にあるのかわかっているし、目を背けているだけではいけないことも分かっているけれど。
彼の秘部から指を引き抜く。
「愛しているよ」
繋がっている間は何もかも忘れられるから。
「俺も」
股を大きく開かれ頬を染めながらも想いを返してくれる兄。
このまま時間が止まればいいのにと思いながら、優人は彼の秘部に自分自身をあてがった。
兄の秘部を抉じ開け自分自身を穿つ、この瞬間が好きだった。受け入れることはそう簡単ではないはずた。
精神的にも肉体的にも。
それなのに自分にだけ許されるこの行為が特別なものだと思えるから。
──oh.I know.
そうか、これは救いでもあるのだろう。
「先っちょ、とろとろ」
彼自身に指を指を絡め、耳元で囁いていいところを攻めたてる。
「んんッ」
甘い声と濡れた卑猥な音に本能を刺激されながら、何度も彼の中に自分自身を穿つ。
壊れてしまいそうな心を抱きしめて。
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