転がる真珠の行き先は

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転がる真珠の行き先は

 父方曾祖母(そうそぼ)の四十九日が終わり、彼女が一人で暮らしていた家は売りに出すことになった。その掃除に私も駆り出された。「どうせ、あんた、テストも終わって暇でしょ」と言う母の一声で。暇なのは、高校二年にもなってバイトを許してくれない母のせいなのに。  そんな訳で、私は母に連れられて電車に乗り、県境をまたいで曾祖母の家へと向かったのだった。まあ、これで手伝えばお小遣いがもらえるかも知れない。そうしたら、来週の友達との忘年会(と言う名のファミレスでのお昼)は、いつもは頼めないちょっと高いやつ頼んじゃおう。  大きな駅に到着すると、伯母さんが車で迎えに来てくれていた。父の妹で、母からすればいわゆる「小姑」だけど、穏やかな物腰のおかげか、押しの強い母とも仲良く付き合えているらしい。 「ごめんねぇ、佳奈子(かなこ)さんに、麗奈(れな)ちゃんまで付き合ってくれちゃって」 「いいのよぉ、困った時はお互い様なんだからぁ」  出掛ける前は憤慨していた私も、会う度に気遣ってくれる伯母の篤子(あつこ)さんを前にすると、「気にしないでください」としか言えなかった。ここで私が「来たくなかった」なんて大暴れをした日にはどうなるか。母はもう少し私に感謝してほしい。  母と伯母が大声で近況を喋り合っている内に、車は曾祖母の……大ばあちゃんの家に到着した。古い日本家屋だけど、十五年くらい前に一回耐震工事をしたらしい。  リュックを居間に置かせて貰うと、私は曾祖父が使っていた寝室の掃除を任された。とりあえず箪笥の中を空にしてほしいと言う伯母さんのお願いと一緒に軍手を渡される。 「怪我しないようにね。動かせない物は無理に動かさなくて良いわよ」 「わかりましたー」  私は軍手をはめて曾祖父の寝室に向かった。
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