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体を寄せて慎吾に体重をかける。私に押され背中を地面につけた慎吾の体を跨いだ。
私の影で慎吾の体が陰る。見下ろす慎吾は泣きそうな顔をしているようにも見えた。
跨いだ太ももの下にある慎吾の腰のベルトに手をかけ外す。
「美紀! 待てって!」
意外なことに慎吾は慌てた。
「冗談だろ?」
「冗談だよ。だからこそ許されるんだって」
「は? ここ外だぞ!?」
「わかってる」
司さんも今頃私じゃない女と体を繋げているに違いない。ビジネスホテルかラブホテルか、または旅館か。どっちみち柔らかい布の上だろう。だから冷たい土と雑草の上で何をしようと私は悪くない。
「でもごめん、慎吾は悪者になっちゃうよね」
私は浮気しても許される。だけど慎吾はそうじゃない。
すると慎吾も自分でジーンズのチャックを開けた。
「俺は元々悪者だから、今更何したって最低だよ」
「最低な浮気男」
「そうだよ。お前の旦那と同じでな」
最低な旦那と同じ最低な男と体を繋げようとしている私も同じく最低な女と言える。
「もう慎吾と会うこともない……と思うから……後悔してたことを今やりたい……」
大胆な行動とは裏腹に声は震える。慎吾は私の手を握って微笑んだ。
「俺も、そう望んだよ」
私だけが悪者にならないような言葉に、もう理性が飛んだ。
思い出の場所で、いつ人が来るかもわからない場所で、10年間の未練を共有する。
「っ……はっ……」
慎吾の漏らした吐息に呼応するように腰を揺らしながら空を見上げた。
目の前にあるのは濃紺と混ざっていくオレンジ。その中に浮かぶ灰色の雲は緩やかに流れる。
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