働きアリ

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働きアリ

今日も働く場所ではこんな声が聞こえてくる。 「あいつ、めちゃくちゃ仕事できるよなあ」 とか…… 「ほんとあいつ使えねえ」 とか…… そうそう…… 働くといえば、蟻さんの世界ではね。 働かない蟻さんがいるらしい。 蟻さんが頑張って働く場所に砂糖を落としてみると、砂糖へ一目散に飛びつく蟻さんがいて、その蟻さんを中心に行列が出来たりして…… その一方で列に混じらず、全く見向きもしないで、その辺をウロウロする蟻さんもいる。 でも働く蟻さんはね? 決してウロウロするだけの蟻さんに…… 「あいつ使えねえな……」 なんて文句は言わないの。 どうしてだろうね? 一目散に砂糖ばかり目掛けて働く蟻さんは、頑張り屋さんで誰が見てもとっても偉い。 一目散に目標に対して頑張り続けるサラリーマンは、誰が見てもとっても偉い。 そんな一目散に働く中、蟻さんを食べる外敵が現れた。 そんな一目散に働くサラリーマンに、意図しない災害が舞い込んだ。 一目散に働く蟻さんは、仕事のことで頭がいっぱいだから、そんな敵に気づかない。 一目散に働くサラリーマンは、いつも仕事熱心だから、その意図しない災害に泡くってしまう。 そんな時、仕事しない蟻さんは外敵に気付いて、慌てて逃げ出す。 そんな時、いつも使えないアイツは人が変わったようにその災害から、働くサラリーマンを助けようと動く。 逃げ出した仕事をしない蟻さんは、周囲に危険信号を出しながら逃げる。仕事をメキメキこなす蟻さんはその信号に助けられる。 いつも使えないアイツは、こんな予想もしない時に必死になって使えるアイツを救ってくれる時がある。 もしも……蟻さんも人間も皆がいつも必死に仕事をして、使える使えないなんてない世界で、みんなが必死に必死にやっていたら? 過労に死んでしまう者を救ってくれる者はいなくなる。 非常事態に冷静に対応できる者、ミラクルのような機転を効かせられる者なんていなくなる。 きっと絶滅への道を早々に辿ることになる。 仕事ができる、できない? ちがうちがう 仕事ができるあいつ、愚痴を言うあいつ、皆だってきっと心のどこかでは気づいているんじゃない? 仕事ができないあいつが、この場所に必要なんだってこと。 仕事ってね。 目に見える仕事、目に見えない仕事があるの。 目に見えない仕事で動く者たちは、どうしても目に見える仕事をする者たちにとって邪魔で使えない存在になってしまう。 でも、目に見えない仕事をする者たちは、目に見える仕事をする者たちにできない仕事をしてるんだって、たまに思うことがある。 仕事ができないんじゃなくて、仕事をやらないんじゃなくて、社会という大きな括りで物事を見た時に、必要な仕事をしているのかもしれないって…… そう思うことがある。 みんなはどうかな? いつも使えねえな、辞めちまえよと思ってるあいつは…… 本当にいらない存在?
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