木村豆腐店

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 翌朝俺が起きるといつものように一階では親父が黙々と豆腐を大きな水槽から取り出しては、それを包丁で切り分けていた。俺はその横を素通りし挨拶もしないで台所へと向かった。  「おはよう、守!!飯食ってけよ!!」 すれ違い様親父の声が聞こえたが、もちろんシカトした。台所のテーブルを見るといつものように親父が作った絹豆腐のやっこが置かれ、あとは生卵や惣菜などが適当に置かれていたが、俺は豆腐以外を食べ必ず豆腐は残していた。なぜなら親父に対する俺なりの反抗というか抵抗のようなものだったからだ。  食事を終えた俺がふと視線をテーブルの端にやると麦茶の入った容器の隣りにある新聞と一緒に1000円札が置かれていた。手紙と一緒に・・
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