木村豆腐店

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 「くそ親父、手紙なんか書いてやがる・・キモ!!」 俺は千円札だけを握りしめ乱暴にポケットに突っ込むと、手紙はくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ捨てた。読む気なんかさらさらなかった。そして、俺はそのまま学校へと向かった。  「うん?なんだ守のやつ読んでくれなかったのか。反抗期だから仕方ないか・・なあ?母さん、俺は俺なりに精一杯息子に接してるつもりなんだが、守のやつはあの有様だよ。天国で母さんは、きっと笑ってるだろうな。焦らずじっくりと守と向き合っていくよ。だから母さんも天国で俺と守の事を見守っててくれな。それとよ、最近なんだか胸の辺りが痛くて咳き込む事あるんだけど、俺も年かもしれないな。まだ天国に連れてかないでくれよな母さん。守が一人ぼっちになっちまう。せめてあいつが高校卒業して立派な大人になるまでは俺が大切に育てていかないとならないしな」 守の父親は死んだ守の母の遺影を見つめながら語りかけていた。
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