第2章『勃発』

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その3 ケイコ 祥子と私は、多美の話をひと通り聞いて病室を出た 「これは計画的犯行だな。多美を南玉のリーダーと承知して…。クソッ、落とし前は絶対つけてやる」 祥子は憤りを隠さなかった 「だけど、向こうはやくざまがいの手段で来てるよ。安易な報復に走ったら、泥沼の全面戦争ってことになると思う。祥子、ここは慎重にさ…」 「ああ、そうだな。さすが、こういう時のおけいはしっかりしてるよ。だが、実際どう対処するか…」 「まずは、南玉のみんなには、冷静を保って、はやった行動を起こさないように徹底させないとね。それは祥子が主だった者に真摯に説けば、それで南玉のみんなにも伝わると思う」 「ああ、今日中にも幹部連中には話をするよ」 「うん。それと、今回の勃発を受けた反排赤の各協力勢力と共通方針を固めて、足並みをそろえないとね。早急にさ」 「そうだな。早速各グループと会談するか。その場合、一堂に会したほうがいいかな?」 「うーん、それじゃ、相手にも何かとわかりやすくなっちゃうかな。それに、去年の経緯もあることだし、確執は残ってるから…。今ここで、いきなり一堂にってのは、無理があるでしょ。ここは各派に個別折衝で行こうよ。私も手伝うし、分担でやろう」 「よし…。なら、大体はここで分担、決めとくか…」 私は”部外者”だが、祥子を陰から全面的に支える決意を持った ... 「フフ…、おけい、お前の戦略通りでいこう。生活かかってるお前の手を煩わせて済まんが、よろしく頼むわ」 私は「こっちこそ」と言って、10センチ近く背が高い、祥子の肩をポンとたたいた 私たちの段取りは、去年の再編成時の対抗軸をそのまま、分担分けとした きわめてオーソドックスではあるが、祥子が南玉連合のトップに立ったことで、両派への接着効果が高まったと思うから、意外とスムーズに協力が取り付けると直感したんだ まず、旧南玉連合の相川先輩、湯本先輩らと紅組には、私が直談判し、墨東会OBの南部さんへの橋渡しをお願いする手はずでね 一方、再編時の麻衣の協力勢力であった、紅組離脱グループと岩本真樹子の勢力、それに墨東会正規勢力には、北田久美にその折衝役を当てたらどうかと提案したわ 祥子は、ちょっとあっけにとらてれたみたいだったけど… ... 「なるほど、久美か…。適任かもな。じゃあ、この後、多美の報告に際してその辺は、みんなに話しておくよ。あと当面、多美の穴はさえってところかな?」 「妥当だと思う。ただ、こういう情勢に至ったからには、あくまで祥子は南玉連合全体のトップとして、どっしり構えることが、反排赤勢力の求心力を維持できることに直結すると思うんだ」 祥子は腕組みしながら、小刻みに頷いてる 「…祥子はさ、私と麻衣を統括した荒子さんのような立場で、総指揮ってことでさ…。一時的な態勢だろうけど、各校勢力のサブをさえ、走りのサブを静美に充てたらどうかと思う」 「ふう…、お前は今さらながらだが、どうしてこういう時、そうポンポンと考えが浮かぶんだ。バランス感覚もしっかり持ってるし…。まあ、頼もしいよ」 私はくすっと笑った そして、祥子は少し表情を固くして言った 「それでさ、麻衣のことなんだけど…」 うん、麻衣についてはしっかり定めておかないとね…
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