第2章『勃発』

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その5 ケイコ なんか緊張する えーと、約半年ぶりになるのかな、相川先輩とは… とにかく”勃発”したからには、この人とは最初に今後の摺り寄せをしておかないと… ... 祥子からは今朝電話があった 昨夜のうちに、南玉の主だった者には”報告”を済ませ、当面の指針にも同意を得たようだ やはり、多美がああいった惨い手口で襲われたことは衝撃が強かったらしく、報復すべしとの声もあるとのことだ 一応、明後日幹部会を開くことになったので、私もそれまでには”こっち”の取りまとめを最低限でも目途付けとかなきゃ… ... 待ち合わせ場所の、K駅キヨスク前で待つこと10分… 「ケイコー!」 「相川先輩…!」 「わー、久しぶり!元気だった?…って言いたいとこなんだけど、いろいろ聞いてるからな…」 相川先輩は、私の顔とか体の変化をチェックするようなしぐさを見せながら、意味ありげに言葉をかけてきた 「ご心配おかけしてると思っていました。先輩には、南玉OGとしてだけではなく、陸上部の元主将としての両方の立場に対して、申し訳ない気持ちでいっぱいです。あんな辞め方して、ホントはお会いできる身分じゃないのは承知なんですが…」 「ハハハ…、あなたのことはわかってるから。テツヤ君も言ってるらしいわ。”おけいはえらいんだよ。何がって言われたら、全部”…、だって(笑)。私はケイコのこと、それですべてを総じてると思う…」 相川先輩‥ それに、テツヤがそんなことを… 「ええと‥、コーヒーショップで話す?」 「はい…、じゃあ」 ... 私たちは駅構内のコーヒーショップで向かい合った 相川先輩は東京の大学に通ってて、将来は通訳を目指しているそうだ 今日は多美が襲われたことの報告と、対排赤勢力に向けた方針を確認する訳だが、やっぱり何かと積もる話に花が咲き、”本題”に入るまで、20分くらいかかっちゃった 「…じゃあ、本田多美代の火傷はさほど、心配はいらないのね?」 「ええ…。多少跡は残るらしいですが、今週中に退院できそうです」 「そう、とにかく良かったわ。やっぱり砂垣一派が愚連隊系を使ってってことよね?」 「それは間違いないですね。多美には勢力割譲を要求して来たので。ただ、例のバックがどの程度関与しているのか…。今回はその辺が、今一つ掴みどころがなくて…」 「直接手を下したのは、明らかに愚連隊系だとしてよ…。本田多美代には悪いけど、それにしたら、なんか手ぬるくない?」 ”手ぬるい…” どういう意味だろうか…
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