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その7
ケイコ
更に先輩は協力勢力との方向性についても、現実的に掘り下げてくれた
「今回の再編闘争の構図は、極めて明確よ。排赤×反排赤は、もはや赤と黒の対立じゃない。紅子さんの理念を次代へ繋げるか、絶たれるか…、その戦いの図式になってる。そうでしょ?」
「はい。私もそう思います」
「幸い、こっちサイドはその旗の下、結束の地ならしはある程度ってとこよね。ポイントなのは、その結束の証を示せるかになると思う。やはり、外部への発信は欠かせないわ。県外の友好組織だって注目してるだろうし」
おっしゃる通りだ
”赤塗り”の先駆者である南玉連合には、常に後発女性勢力の注目を浴びている
今回の件を受け、都下と南神奈川の友好組織からは、既に激励が届いたそうだよ
...
「ええ。でも、あのう…、その証って私たち結束勢力が、一堂に集うことってことになりますかね…」
「やはり、理念の旗を大きく掲げる姿を発信する、ぜひそういう機会を持つことが望ましいと思う。ただ、そこまでになると、去年のしこりがね…」
やはり、去年の一連の騒動がひっかかってくるか…
「でも、今南玉は完全に一本化できました。トップの祥子も、私と麻衣が仕切っていた頃のスタンスからは、脱却してますよ。その南玉が呼びかければ…」
「ケイコ、問題はその本郷麻衣よ…。私の耳にも入ってるわ。相和会の幹部と結婚するんでしょ?いくら何でも、あの子の影が完全に払拭されない限り、一致団結はあり得ない。麻衣への疑念と恩讐は、まだ消えていないのよ。ケイコ…、あなたはどうなの?」
「…」
私はここで言葉に詰まった
...
「…まあ、私もすべてを知ってる訳じゃないから、やたらなことは言えないわ。でも、少なくとも、簡単に麻衣を許す気持ちにはなれない。…あなた自身だって…。違う?ケイコ…」
「はい…。正直って、麻衣を殺してやりたいくらい、憎んでいます。今でも…」
「ケイコ…」
言ってしまった…
それは喉につかえていたものを、一気に吐き出すかのようだった…
...
「でも…、私と麻衣が立て続けに南玉を抜けて、久美も脱退すると同時に南玉に反旗を掲げて…。あとを継いでくれた祥子と多美は、南玉を守るために一本化を決意しました。でも、両派それぞれが去年の言い分を引きずっていて…」
相川先輩は口を真一文字に閉じ、私の顔から視線を離さず、耳を傾けてくれてる
「…OB、OGの統制機能も、以前みたいな役割は望めない中、そのままだったら、おそらく分裂してました。それを救ったのは、他ならぬ麻衣なんですよ!」
「ケイコ、それはあなたがいたから…」
「いいえ!私は自分のことばかりで、見てみぬふりでした。多美と祥子がどんなに苦しんでるか知っていたのに…。私…」
この時点で、首を左右に何度も振り、私は明らかに取り乱していた…
...
「ケイコ、落ち着いて…、ねっ…」
「あ、すいません…。…そんな中、麻衣はタチの悪い男の影響で南玉を飛び出た久美を諭して、去年、レッド・ドッグスから追放の経緯がある馬美に、久美と一緒に謝罪したんです。結果、久美は南玉に戻れ、なおかつ馬美まで、この大変な時期に南玉にカムバックしてくれたんですよ!」
「そうだったの…。あの麻衣がそこまで…」
「それだけじゃないんです。一本化にはむしろ、私が仕切っていた各校勢力の方が、意固地になってて…。走りのメンバーも感情的に限界に達してたところを、復帰を懇願された麻衣はそれを諫め、彼女たちを止まらせました…」
これは、祥子や他のメンバーから聞いた話も含まれるが、ほぼ事実に間違いないよ
「…一本化で奔走する多美と祥子に尽くすよう説いたんですよ、麻衣は…。ヤツも心の奥では、紅子さんの理念を決して絶やしたくないと考えていたんと思うんです。今までやってきたことはメチャクチャであっても…」
今日、先輩には己の思い、そのすべてをぶつけることになりそうだ
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