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その2
多美
おけいが家を出た…
そして、愛する人と一緒に住んでるそうだ
先週、アイツの家に電話したんだが、美咲ちゃんが出て、なんか様子が変だったのは感じた
その時は泊りがけで出かけてるとかで、戻ったら連絡させるということだったわ
で、一昨日おけいから連絡があった
そんで、いきなり聞かされて…
驚いたわ、ともかく…
今日は祥子と3人で会うことになってる
午後4時半…
バイトは4時までだって言ってたから、もうそろそろ来る頃かな
...
「でもよう…、あのおけいが警察入って高校退学とはなあ…。まあ、クスリとか相和会のバックとか、その辺は以前から薄々だったけど…。でもよう、その後家出して彼と同棲ってんだから、びっくり仰天だよ…」
展望公園のベンチで腰かけてる隣の祥子は、腕組みしながらそう言うと、溜息を吐いた
「…麻衣ともこの夏、いろいろあったみたいで、今、絶縁状態らしいしな。おけいって、私らの中では一番フツーの女子高生だったよな。本来は私らみたいな不良連中と一緒になるタイプじゃないだろ。それなのになあ…」
うん、そうだよ
おけいはそもそも、南玉連合には入る気なんて全くなかったし、不良とかズベでもない
奔放だが、学校側から見たら、どちらかというと優等生だよ
...
「…思い出すよ、アイツと初めて出会った日、親善駅伝のチームが一緒だったんだけどさ。リハん時、手抜きした東京もんに突っかかっていた私のこと、体を張って制止してきたよ(苦笑)」
おけいはフェアな立場で、毅然とその場を収めたんだよな
ある意味、ショックを受けたよ
それからヤツとは意気投合してね…
そうそう、テツヤも交えてさ(苦笑)
あの日のことは忘れられない、たぶん一生…
「…アイツ、バラバラだったチームをまとめて、結局3位に導いてくれたんだ。東京と埼玉の垣根を越えてさ。祥子の言うとおり、陸上で一生懸命、部活に励んでたフツーの高校生だったな」
それが、麻衣と出会ったことで、アイツの人生が変わった…
...
祥子がいみじくも言ったよ
「私なんかさ、逆に麻衣と出会っていなかったら、今頃高校辞めてたよ。ヤツの伝手で1年ダブってた私がさ、埼玉校に移れたんだ。そんで、南玉のみんなとも、いい付き合いできた訳だし…」
祥子は当時、学校なんかほとんど行かず、フリーで暴れまわってたらしいからな(苦笑)
麻衣とは初対面で、いきなりタイマンの死闘を演じたって話は今や伝説だ
「…なのに、先生の評判も良くて、なんでも前向きで頑張ってたおけいの方はさ、麻衣と出会ってなかったら、今も部活に健全な汗流してたはずだよ。それこそ、その辺の女子高生と変わりなかったんだろうにな…」
祥子は南玉内では麻衣の側で、私らとは反目してた立場だったんだけどね
でも、おけいとは肌が合ってるようで、仲が良かったよ
だから、今のおけいの”境遇”には複雑な思いがあるんだろう…
...
「おーい!多美―、祥子―!」
あっ…!
おけいが走ってこっちに向かってくるぞ
おお…、相変わらず歩幅の広い、カモシカのような走りだ
...
「よー!おけい、久しぶりだなー、ははは…」
「祥子…、なかなか連絡できなくてゴメン。会えてうれしい…」
祥子とおけいはがっちり抱き合った
私は警察から戻ったおけいとは一度会っていたが、祥子とおけいは南玉を出てから数度会って、それ以来だろうからな
なんか、傍で見てても、じーんときちゃうわ
...
その後、3人はしばらく取り留めのない話で、盛り上がっちゃってね…
おけいの彼氏は年上で、なんだかプロのミュージシャン目指してる人とか…
凄いじゃん…
なにしろ私には、おけいの彼氏と言えば、あの”エロ男”テツヤってイメージが固まってたからね(爆笑)
おけい、その年上の彼とはラブラブで、新婚さんみたいな生活してるってのろけてたわ(苦笑)
とにかく、コイツが思いのほか元気なんで安心したわ
もっとも、おけいのことだ
私らに気を使ってるってことはあるかもな
で、先週からファミレスのバイトを始めてると…
さあ、その話の流れになったなら、ここらで”こっち”の話もしなきゃ…
私は、おけいを挟んで座っている祥子に目配りをした
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