第1章『発熱の夏、再び』

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その3 ケイコ 楽しい、懐かしい、心地よい… 一年前の再編後、走りと各校の部隊勢力に分かれてから、必死で新生南玉連合を支えてきた仲間たち 今年の春には荒子さんも引退し、麻衣と私のツートップ体制がスタートしたんだけど… 私が夏休み中に脱退 その直後、麻衣も南玉を去った その後は今ここにいる多美と祥子が、私らを継いでくれた そして、二人は南玉内外の諸情勢を鑑み、再び南玉を一本に戻す方針を決めた だけど両派のメンバー間には、今までの感情的な溝が根深く、一本化の妨げになっているようで、多美も祥子も難儀しているらしい ... 「新しい生活をスタートさせたおけいには、ホントに申し訳ないんだが、力を貸してほしんだ…」 右隣の多美は、身を乗り出してそう切り出した 多美が言うには、各校部隊側は私の逮捕と退学処分にショックを受けたらしく、麻衣と私が絶縁状態にあることもあって、私のことを、麻衣が散々振る舞ってきた悪行の犠牲者として捉えているようなんだ その勢力は祥子と強調路線を敷く多美に反発し、サブの一人だった”さえ”こと冴木ひとみが中心となって、麻衣による私への謝罪を求める強行姿勢を打ち出しているという 「私の力不足で情けないよ。そんで近く、さえとアカネら数人がおけいに会いに行くと思うんだ。お前がファミレスで働いてる噂はもう、浸透してるからさ。表向きは激励ってことで、店にね、おそらく…」 そう言えば、さほど仲の良くなかった中学や高校の知り合いで、すでに何人かが”仕事場”に来た 頑張ってねとか、声をかけてくれるのは嬉しいんだけど… やっぱり、今はそっとっしておいて欲しい気持ちが強くてね そのあたりは、中学時代の親友の薫や絵美、それに高校の親しい面々は分かってくれてるみたいで… 主だった気を許せる友人は店には来ないよ、今んとこは この多美や祥子だってその辺汲んでくれて、私の職場である店以外で会おうと言ってくれたんだ こういう状況に身を置くと、人の心根ってのがよく見えてくるよ、ホントに
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