第1章『発熱の夏、再び』

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その4 多美 「おけい、私が言うのもなんだが、この多美だって個人的にはさえやアカネと同じ気持ちだと思うよ。麻衣、おけいに頭くらい下げろよって…。だけどさ、多美は南玉全体のことを考えてるからね。私心はじっと抑えてるんだ」 祥子がここまで私のことを擁護してくれるなんて… 正直、意外だったよ… 「さっきも、お前が来る前に多美とは話してたんだ。麻衣にさえ出会わなければ、おけいは今頃フツーの高校生でさ、部活に勉強に恋にと、人の数倍頑張ってたはずなのにって。私もそう思ってる」 「祥子…」 おけいも祥子のこの言葉には驚いてるみたいだ 「でもさ、今は何としても、ひとつにまとまらなきゃいけない時期だろ?砂垣のヤローが、またぞろ手を突っ込んできてるし。みんな、その辺の危機感が今いちだよ。なあ、そこで奴らにお前からその辺、悟してやってもらいたいんだ。さえはお前のカムバックを求めてくると思うから」 祥子… 筋からしたら、私がおけいに頭下げて頼まなきゃいけないのに… ... 「残念ながらさ、麻衣とおけいみたいには、みんなをリードできないんだ。私らではね。何かと大変なお前をこれ以上煩わすのは、心苦しんだが…。連中もお前からなら聞き分けてくれると思うんだ」 「おけい、祥子の方はまとまってるんだ。ばらついてるのはこっちで、私の責任だよ。ここで各校サイドが駄々こね続けてりゃ、”走り”は抜けちゃう。この際、恥も外聞も捨てて南玉を守らなきゃ、先輩たちに申し訳ないよ。この通りだ、おけい…」 ここで私は大きな声で訴え、おけいに頭を下げた 「多美、いいよ、頭なんか下げなくて。元はと言えば、私の身勝手な脱退で後を押し付けたんだから。アンタには無理言ってさ」 「おけい…」 「祥子、多美、二人の気持ちは預かる。さえにはしっかり話すさ。麻衣とはあくまで個人的な問題なんだから。その辺はきっぱりと伝える。みんなだって、排赤勢力に呑み込まれるのを見過ごす気はないだろうし」 「ありがとう、おけい…」 私は思わず、涙声になった ... 「祥子、すまない。私がだらしないせいで、アンタに負担かけて…」 「いや、お前は偉いって。私がここまでハラ据えられたのは、多美が持ってる南玉への情熱が伝わってきたからだよ。本当にお前は南玉が好きなんだよなー、ハハハ…」 「ああ、永遠の恋人だよ、南玉連合はさ。ハハハ…」 3人は声を出して笑ってたよ その後、おけいは先に展望公園を去った 祥子は二人になった後、ぽつりと言ったわ 「本気で人を愛した女の目って、きれいなもんだな…。最近、いい恋をしてる女が多くてさ、参っちゃうわ(苦笑)」 それって、久美のことかと思ったんだが いや、もしかしたら…
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